テンペスト
読んだのはちくま文庫の松岡和子訳。注が詳しくてよかった。
『テンペスト』は、英国でいちばん有名な(と断言してもちろんいいだろう)劇作家ウィリアム・シェイクスピアが書いた戯曲で、初演は不明だが、1611年に上演されたことは確かであるとのこと。弟の策略で地位を奪われた元ミラノ大公のプロスペローが妖精の力を借りて公国を取りもどす話だ。歌もあるし踊りもあるし、最後は大団円で、読んでいてわくわくする。じっさいに観劇したらきっとたのしいんだろうなあ。
とくに気に入ったのは第4幕第1場で妖精たちが踊る祝福のダンスが終わったあとにプロスペローが言う、以下のセリフ。
我々は/夢と同じ糸で織り上げられている、ささやかな一生を/しめくくるのは眠りなのだ。
「我々」と「夢」をひとしく織物にたとえているのがいい。人それぞれの糸をつかって、みんなちがった織り方で、「我々」と「夢」は、織り上がってできている。そしてその一生は眠りによって「しめくくられる」のだ。しかもこの言い回しはちょっと、いままさに(僕の脳内で)上演されている演劇『テンペスト』そのものの隠喩っぽくもなっている。
翻訳に感動したので原文はどうなっているのかと思い、調べた。すると、
We are such stuff / As dreams are made on, and our little life / Is rounded with a sleep.
ということみたいだ。……なるほど、これは正直、日本語訳のほうがイメージに富んでいてうつくしいと思う。そんなこともあるのだなあ、と感心した。
戯曲はおおくがセリフで構成されており、文字が詰まっていないので、わりと短時間で読めるのも魅力のひとつだ(僕はめんどうくさがりだから)。まだ読んでいないほかの作品も本棚から引っ張りだして、ぱらぱらめくってみようかな。