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街の灯


もうずいぶん前のことのように思えてしまうけれど、そしてじっさいもうずいぶん前のことで、だからけっこう今さらなんだけど、今月の2日に恵比寿でALのライブを観たので、その話をしてみる。


AL(「アル」って読むらしい)というのは、元andymoriのメンバー3人(小山田壮平、藤原寛、後藤大樹)にシンガーソングライターの長澤知之が加わったバンドのこと。これまでずっと壮平と知之はふたりでそれとして活動してきていたらしい。なので、今回はALがバンド体制になってはじめてのライブ、というわけです。


andymoriは、もう解散しちゃったんだけど、僕のいちばん好きなバンドのひとつだ。彼らのつくる音楽はほんとうに素晴らしかった。繊細で、でも同時に荒っぽさもあって、どこまでも自由にのびやかなかんじ。聴いてるといつも感情がどおーっと流れ出すような、なんともいえない開かれた気持ちになる。酔っぱらったときに大声で歌いたくなるような抑揚のあるメロディー。それにもちろん歌詞も……と、まあ、うん、うまく言えないけど、とにかく僕の「肌にあった」感じがした。あのときのライブたちもまじで最高だった。たましいに染みこむような音楽だった。


解散してから当然ずっと演奏みてないわけで、だから僕はこの日がくるのをわくわくどきどきしながら待っていた。じっさいライブ前はめちゃくちゃ緊張した。心臓がドラムをばしばし叩いてるんじゃねえのかなあと思ったほどだった。なんで客が緊張してるんだよってかんじだけれど、ほんとにやばかったのだ。


ツーマンだったから、さいしょはPolaris(つづりあってるかな)のライブだった。Polarisよかった。フィッシュマンズキリンジの歌に似たものを感じたな。世代的にたぶんそこらへんのバンドなのかもしれない。


Polarisがおわって、しばらくセッティングの時間があって、ALがはいってきた。1時間くらいのみじかいライブ。メンバーはしっかりと、味わうように演奏していた。僕はたまに天井をあおぎながらしみじみ聴いた。お客さんたちはみんなALのことが好きみたいで、ホーム感というのだろうか、なごやかな雰囲気があった。


ALの曲は壮平と知之がそれぞれ共同でつくっているらしい。


えーと、正直に言ってしまおう。僕は壮平の書くメロディーに心身ともに親しんでいるから、どうしても歌のなかに彼の要素を探そうとしてしまったし、壮平らしいメロディーラインが来ると感情が「ざざーん」と波立った。しかし逆にこれは彼のものじゃないなというのが来るとああこれは彼のものじゃないんだろうなという気になってしまって(伝われ)、なんだろうこの、一抹のさみしさは、という瞬間もたしかにあった。2人でハーモニーを奏でるみたいなかんじだから壮平だけで好き勝手にぶっ飛べないのだろうというのも感じた。「うむ、超いいなあ、でも、そうだよね、もうandymoriじゃないんだもんね」、みたいなのは、ちょっとしこりとして残ってしまった。


とはいえ、そういうのは、あるいは、たんなる「慣れ」の問題なのかもしれない。ALはまっすぐなバンドで、みんな楽しそうで、聴こえてきたのはまちがいなくいい曲ばかりだった。僕はとくに「ワレモノ」という歌を気に入った。いちどしか聴いていないからあれだけど、「出てこいよ、出てこい。その殻を破って。ただ、ありのままを愛したいんだから」みたいな歌詞が好きだった。こんど出るアルバムには収録されてないみたいなんだけれど。あと「メアリージェーン」もよかったな。これはインドを舞台にした曲だったという記憶がある。"Everything's gonna be alright."(「ぜんぶうまくいくさ」)というリフレインが印象的だった。


会場になった恵比寿LIQUIDROOMは、天井からたくさんの電球が吊りさげられているライブハウスで、曲中ステージが暗くなるとその電球たちがきらきら輝いてうつくしく、まるで無数のちいさな街の灯(citylights)が僕たちを照らしてくれているみたいだった。andymori時代につくったあの曲を彼らがやることはもうないのかもしれないけれど、いずれにせよ、いまのあのひとたちがALとしてのびやかに自由に音楽をやっているならば、それでもうじゅうぶん素晴らしいことのかもしれない、と思う。


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